「彼女は頭が悪いから」小説は事実よりリアルだ 姫野カオルコ

 小説は事実よりリアルだ「彼女は頭が悪いから」姫野カオルコ 文藝春秋

 

「裸にした女子大生に頭からカッブラーメンをかける」等した東大生の性暴力事件をきっかけに、「なんで」「ヘンだ」「何故」を、考えて考えて考えて、丁寧に丁寧に書いた「長めの助走」が非常に効果的な長編でした

 

東大生であること、大学差別、階級意識、受験、女性蔑視、ホモフォビア、集団になるとバカになる、女性を見下して成立する男性の集団。人によって引っかかるポイントが違うことだろう

色々な大学の学生たち、その親たちがすごくリアルで、詳細はともかく、本当のところは「こういうこと」なんだろうなと思えてしまう。姫野さんはすごい。

 

小説家が小説家の仕事をした、と言うことです

 

この事件を起こすような東大生たちと私とは違う、と思うけれども、どこで線を引けるのか、それはにわかにはわからない

ーーー なお、姫野カオルコが筆をふるっているのは

「このような事件を起こすような」東大生は何故?であることは、一応区別しておきたい。

 

始めのほうで、東京理科大の2部・夜間であることを、つい隠してしまう女子大生が出てくる。

これはかっこ悪いと思う一方で、気持ちはわかる自分もやるかもと思う

小説を読んでいる間、ずっと自分の中の差別意識を自覚するので、読んでる間、うっすらと気分が悪い。作品はすごく面白い。

被害者となる女子大生が、何の落ち度もない普通の女の子であることを描くことも注意深く行われていて、自己評価が少し低いところを含めて普通の女子大生だ。胸の大きい女性が、胸が目立つ服を着る屈折が描かれているところなど、さすがは姫野さんだと思う。

一方でピカピカの東大生たち。


若い知性代表もいる。区立中学の頃から東洋大文学部で堕落したい、山岸遥だ。

彼女に長い長い助走の答えの一つを言わせている。東大生の翼は、東大生であることに意識過剰なのだ、認知が歪んでいる、と。階級意識と偏見がナチュラルに織り込まれてぃるのだ。

でも、それは私のなかにあるものと、どう違う、のだろうか。

 

なお、この小説で一番の知性は、水谷大学の三浦教授だと思います。あの人がいて良かった。