「犬も出てきます」直木賞フェス☆姫野カオルコさんコーナー

ジャージでした。

 詳細はあとで。

(以下追記:3/8)

 

 芥川・直木賞フェスティバル☆姫野カオルコさんレポ

 (丸の内・「マルキューブ」)3月2日(日)4時45分-5時

 

 

(アナウンス):隣に座っておりますのが、

文芸春秋で姫野さんご長く担当しておりますアラマタと申します

姫野さん、直木賞第110回受賞ということでおめでとうございます

 

姫野(h):有難うございます。

 今日お越しの皆様も寒い日にありがとうございます

 

アラマタ(a):受章が決まられてから1ヶ月半ぐらい経つんですけれども

受賞後の暮らしぶりはいかがですか

受章前と何か変わったことありましたでしょうか

 

h:全然スポーツできなくなってしまいました

 

a:ジムに行く時間がないということですか

 

h:自分の気持ちは全然変わってなくて

次から次からとしなければならないことがあって、

ほとんどジムに行けなくなってしまいました

それがいちばん大きいです

 

それだけです

 

a:ちょっと作品を書く時間もなかなか取れなくて、

それに悩んでおられましたね

 

h:うちにはテレビがなくて、

それで自分が報道されている姿を1つを観てないんですね

(賞を)取ったって言う実感が全然ないです

 

 17年、5回の直木賞候補

 

a:姫野さん、直木賞5回候補になって、それで今回受賞なさったんですけれども

1回目が1997年の「受難」という作品で、これは私が担当させて頂いたのです

 

それから17年目で受賞という、直木賞と長いお付き合いになったわけですけれど

この17年間というのはいかがでしたか

 

h:「受難」で候補になったときの、

その時の写真を見ると、すごく自分が若くてびっくりしました

すごくびっくりした、若くて。

今はこんなに歳をとってしまった

 

a:私の印象ですと、

初めてお目にかかった時と、あんまり変わらないんですよね

 

17年目で受賞というと、なんか、すごい苦労人感があるんですけれども

全然そういう苦労が顔に出ていないというかですね、

お肌が綺麗なせいかも知れないですけれど

ほとんど変わった感じがないんですけれど

 

その「受難」の少し前に、初めてお目にかかった訳ですが

女性誌の恋愛特集のコメンテーターというイメージが強いので

困っているとおっしゃっていたことがありましたが

( =「恋愛体験を語るエッセイを書いている人」……このイメージが邪魔をするので困る)

 

 お目にかかったとき

「これからはどんどん小説を書いていきたい」とおっしゃってて

その頃の創作姿勢とか、どういう感じだったんですか

 

h:ずっと小説は書いていたんですよ。

 

アラマタさんに会った時に言ったのは

「 一回女性誌恋愛特集のコメントをすると、

違う女性誌からまた依頼が来て

そしたら、またまた違う女性誌から依頼が来て、

恋愛特集のコメントがずーっと続いてしまうので

時間が取られるようになって、もう大変なので、

連鎖を止めないといけない」

という風に言ったんですよ

 

 「受難」とキリスト教姫野カオルコ

a:「受難」と言う作品は、今から振り返っても かなりぶっ飛んだ作品で、

今年、実は映画化されたんですけれども

女性のアソコに人面疽ができて、

人面疽と語り合うというお話なんです

 

姫野さんは、お育ちになる間にキリスト教の影響が結構おありになって

(「受難」のフランチェス子は)

アッシジの聖フランチェスコがモデルになったということなんですけれど

キリスト教の教育のようなことをお話いただけますか

 

h:私はそんなにちゃんとしたクリスチャンではありません

とてもインチキクリスチャンです

 

ただ、すごく小さい時に、

自分のすぐ周りに

牧師さんとかシスターとか、そういう人がいたり

生活の中にそういう人がいたことで、知らないうちに影響受けてるのかな?とは思います

 

ちょっと私の敗因だったのは

日本人の多くの人が、そういう影響受けてると思っていたことでした

 

なので、「整形美女」という作品があるのですけれども

そののヒロインは、カイコとアベコと言うんですね

で、それが、日本人のほとんどが、

カインとアベル」のもじりだと解ると思っていたんですが

随分とたくさんの方から

「何故、カイコとアベコというような、おかしな名前をつけられたのですか」

とか言われたときに、

ふと自分が間違ってたかなと思いました

売れセンとしては……

 

 マイノリティな感覚

a:そういう意味では若干マイノリティーなノリというか感覚が、

姫野さんの作品の中にはあるように思いますけれど

 

それが直木賞の受賞に時間がかかった要因の1つなのかなぁと、

思うようなこともあります

 

h:……私はエンタテイメントと純文学との分け方が少しよくわかってません

 

私の中ではエンタテイメントというのは「筋」を中心とした小説で、

何か事件が起こって、どうなってなってという

ストーリーとか筋を中心とした作品が、エンターテイメント。

 

出てくる人の心境とか心理とかを追ったものが、純文学、

と思っていたんですね

 

それで言うと(私のは)心理小説、心理を多く語った小説だと思うので。

どっちが売れるかっていうと、筋をかたった小説の方が売れるので。

 

自分の話は筋が少ないので、

それで、あんまり人のハートを掴むことが出来なかったのだろうと思います

 

今も掴めませんので……(クスクス)

今も掴めてないと思います

 

 昭和の時代

a:受賞作の「昭和の犬」という作品なんですけれども

姫野さんは、ある時期から昭和の時代を作品に描かれるようになって

同じく直木賞候補になった、 「ハルカ・エイティ」の頃からなんですけれども

昭和を題材にするようになさった理由は何なんでしょうか

 

h:特に理由がありません

 

a:……この「昭和の犬」の中でも出てくるんですけれども

シベリアに抑留されて帰ってきたお父さん、

これは姫野さんの実際の体験が反映されていると思うんですけれど

 

姫野さんの上の世代から、当時子供だった姫野さんの世代が伺ったことを

お書きになった作品が

いくつかあると思うんですけれども

 

そういう作品に、手を染めるようになったというのは、

どういうきっかけがあったんでしょうか

 

h:もう一回(お願いします)……

 

a:「ハルカ・エイティ」でもいいんですけれど、

書こうと思ったきっかけはあるのでしょうか

 

h:戦争ですね、第二次世界大戦のことはとても大きな事件でした

 

それなのに、第二次世界大戦のことを知らない若い人が、増えています

 

私も実際に第二次世界大戦を体験したわけではありません

でも体験していないものなりに、体験した人の姿と言うものは見ているので

体験を実際にしていないものなりに、語りついでいかなければいけない、

という風にはすごい思いましたので。

 

それが「ハルカエイティ」とか、今回の「昭和の犬」もそうですけれど

理由といえばそういう風なものになります

 

a:そういう経緯もあって、昭和のことをお書きになるようになって

それが受賞に結実したのかなぁと

 

 「昭和の犬」は

a:最後にこのご本について、自己PRをしていただいてもいいでしょうか

そこの入り口でも販売しておりますので

 

h:「しょうわの いぬ」と言う、

あ、イントネーションがおかしいですね「昭和の犬」ですね

この本を読んでくださってここに来てくださった方は別としてですね

 

「こういう本がある」という事「だけ」を知って、来てくださった方に、申しあげます

この装丁の写真と、「昭和の犬」と言うタイトルから、

もしかしたら、こんな話を想像されるかもしれません……

 

私は…私はというのは主人公ですね、

私は、父の仕事の都合で、転校が多かった

そういうこともあって、

どこの学校に行っても少しなじめないところがあった

そんな時に父が子犬、子犬をもらってきてくれた

それが不細工な犬で、思わず「ブサ」と言う名前をつけてしまったほどだ

でもブサは学校から帰ってしょんぼりしている私を、いつも慰めてくれた

そのブサが死ぬときに、ブサが私に言った

犬が喋るなんて、そんなことがあるはずがないッて思われるかもしれないけれども

私は本当に聞いたのだ

ブサは言った

ーー君はそのままの君で素晴らしいんだから、元気を出して、

ーー君はそのままの君が素晴らしいんだよ

そう言ってブサは死んでしまった

ブサ、ブサ、永遠の友達ッ

 

 

 

、、みたいな、話を、期待される方がいらっしゃるかもしれませんが、

 

そーゆー話じゃ全然ありません!

私そうゆう話、すごく嫌いなんで、そういう話じゃないです。

そういう話じゃないんで、

「そういう話、嫌だな」と思う人は、是非買ってください。

(会場:笑い)

 

a:姫野さんありがとうございました。(拍手)

これはある種の姫野さんでなければ書けない昭和の話でございます

決して犬の話ではなくて

昭和を生きた人たちのいろんな思いというのがちまった大変素晴らしい作品です

 

h:あっ、ちゃんと犬も出てくるんですよ。犬も出てくるんです!

いっぱい犬出てきます!!

 

☆授賞式ではスーツでした