『昭和の犬』(姫野カオルコ)の次に『ツ、イ、ラ、ク』をオススメ

『昭和の犬』(姫野カオルコ)は個人的な経験が色濃く反映されたような短編の積み重ねのように見えて、普遍的な静かな感動を呼ぶ傑作でした。

 

 姫野さんは17年間で5作直木賞候補になっています。(直木賞のすべて参照

 小説の花は恋愛小説でしょうというあなたに、

次は『ツ、イ、ラ、ク』(角川文庫/第130回直木賞候補:平成15年/2003年下期)をオススメします。

 少し長めの助走がありますが、ここが作品に入り込むのに重要なので金曜の晩から読み始めるのが良いです。

 小学生の女子たちのグループ描写から、中学生のクラス内のあれこれへ繋がります。思春期に突然訪れる「**ちゃんが好き」という強い感情は誰でも覚えがあるでしょう。そこからお話は急に「二人」にフォーカスされます。

 中学生の話?と侮るなかれ、32才以下はお断りの「最強の恋愛文学」を保証します。

 メインの二人のことも強力ですが、二人の周囲の彼、彼女の「あれこれも恋」なのだと感慨深く思い返す読書体験でした。 ホルモンバランスが狂うかと。

 メインの前後の章がとても大事で、ここを書き込むのが姫野さんの個性でしょう。

 また、最適な効果のためにあらゆる文体を駆使する姫野さんの自由さに驚くかと思います。

 

 なお姫野さんの恋愛小説は少なくて、『桃』(『ツ、イ、ラ、ク』のスピンアウト短編)、『変奏曲』くらいです。『終業式』は恋愛要素を含む青春群像劇ですごくオススメ、『蕎麦屋の恋』は読んでのお楽しみかな。←これはまた後日。

 あとは、恋愛について書いてあるけれど「恋愛について考える」小説になりがちです。これも姫野さんの個性ですね。